所長
設置期間
令和4年10月1日~令和7年9月30日
研究テーマ
地域自生広葉樹の活用による家具の開発と森づくり、およびその社会的意味づけ
研究概要
<研究の目的>
本研究所は、地域に自生するが、これまで活用されてこなかった広葉樹種を家具に活用することで、身近な木の利用と森づくりの循環的な繋がりのあり方を家具産地としての静岡中部地域において試行し、発信していくことが目的である。具体的には、
① 静岡大学農学部・水永博己教授と上阿多古演習林(天竜フィールド)と協力し、静岡に自生する広葉樹や、日本および静岡の持続的な森づくりのデザインについて調査・研究する。
② 持続的な森づくりに貢献するが、これまで活用されてこなかった広葉樹種の家具等の木工製品の研究開発に向けて、静岡市で活動する家具関連企業(ヨキカグプロジェクトのメンバー)と連携する。
③ 社会的および環境的な観点から地域の身近な広葉樹で作られた家具・木製品の価値づけ・意味づけを検討する。
④ 地域における広葉樹の流通・活用に向けた法制の現状と課題について考察する。
⑤ 研究や成果を発信しながら、地域に暮らす市民への地場産業や森林への関心・興味の促進、および消費や行動における社会的な選好の育成を目指す。
これらの目的の背景には、とりわけ今日、良質な広葉樹資源の減少やウッドショックの影響によって建築材などの針葉樹だけでなく、家具に利用される広葉樹の国内外の材の入手が難しくなっている。日本の他のいくつかの地域のように静岡でもセンダンなどの成長が早い「早生広葉樹」の育成に乗りだそうとしているが、高度成長期における針葉樹の人工林化のように森の時間を無視した経済の時間の優先、つまり人間の一方的な利益追求的利用による森林の生態系への介入を繰り返しかねない。このような人間の経済的理由による自然環境の一方的利用に対して、本研究所は地域の山に自生し、森林の循環を促すような広葉樹種の家具への利用可能性を地域の関連事業体と連携して、実践的に研究することで、市場とは異なる木材流通の仕組みづくりや地域の森林生態系の保全あるいは再生を促す森林資源の利用の在り方を提起し、講演会・展示会・サイエンスカフェを通して市民の意識・関心の促進へと繋げていく。